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緑陰に溶け込む采配蘭(サイハイラン)【ふれあいの里だより(平成30年5月号)】

更新日:2018年5月1日

5月5日は端午の節句。五月人形を目にする機会も多いときです。中には采配を手にした武者人形もあります。
武将が指揮をするときに振った采配。紙を細く切って房にし、柄につけたものが一般的ですが、これに似ているとして名前が付いたのがサイハイランです。属名のCremastraは、ギリシャ語のkremannymi(懸垂する)+astron(星)からきていて、星形の花が下向きに咲くことから名づけられたとされます。
サイハイランは北海道、本州、四国、九州の山地の木陰に生える多年草で、径3センチメートルほどの地下茎から普通1枚の葉と1本の花茎をだします。花茎の高さは30センチメートルから50センチメートルで、10から20個の花を偏って総状につけます。花の色は淡緑褐色から紅紫色をおびるものまで変異に富みます。地味に見える花ですが、近くで見ると複雑な構造をし、つつましやかで美しい花です。花期は5月から6月、梅雨空の下で花を見かけることもあります。
ランの仲間は人気が高く乱獲などにより数を減らしていますが、サイハイランも埼玉県では絶滅危惧種となっています。また、移植を嫌うものがほとんどで、サイハイランも同様、長期栽培も困難です。これは菌と共生している菌従属栄養植物であることが大きな要因で、サイハイランはナヨタケ科のキノコと菌根共生することが近年わかってきたそうです。
初秋に出た葉は冬も枯れずに残り、葉を落とした落葉樹の下で光合成を続けます。夏ごろに葉は枯れますが、地下茎で共生している菌から養分をもらい成長していきます。
根茎は胃腸薬やひび、あかぎれの薬として利用され、昔は飢饉の時の食用としたそうです。
場所によっては見事な群生を見せてくれ、どこにでもあるようですが、数は多くありません。花も少ない時期、意外と気づかずに通り過ぎているかもしれません。少し暗い森の中、采配を振るのは落ち武者のイメージが無きにしも非ずですが、見つけるとなんだかうれしくなるものです。うつむいて咲いている花を覗き込んでみると星が降り注ぐように見えるでしょうか。
今年は4月中に木の白い花の季節が5月を待たずにピークを過ぎてしまいました。早春に花を咲かせていたウグイスカグラは透明感のある赤い実をつけています。チョウの発生も早かったようですが、サトキマダラヒカゲが見られるといよいよ夏もすぐそこ、年に1度のオオミドリシジミなどのゼフィルスの季節も始まります。
夏めく5月。10日からは愛鳥週間で、野鳥たちは子育ての時期。繁殖地へ移動中のキビタキやセンダイムシクイなどの声も聞かれ、ホトトギスの声を聞くとまさしく「夏は来ぬ」です。5日は『立夏』、21日は万物の生長する気が天地に満ち始めるとされる『小満』で、走り梅雨になることもあります。緑陰の下、森に溶け込むように咲くサイハイラン。ひそかに梅雨入りへの采配が振られるかもしれません。

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