障害を理由とする差別の解消に関する   所沢市職員対応要領 平成28年4月   所 沢 市 内容 T はじめに 1 1.障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)の制定の経緯 1 2.法の基本的な考え方 1 3.本市の姿勢 2 U 対応要領の趣旨 3 1.対応要領の対象範囲 3 2.職員の業務上・服務上の指針 4 3.監督者の責務 4 V 障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止 5 1.不当な差別的取扱いの基本的な考え方 5 2.正当な理由の判断の視点 5 3.不当な差別的取扱いの具体例 5 W 合理的配慮の提供 6 1.合理的配慮の基本的な考え方 6 2.合理的配慮を行うにあたっての留意点 6 3.合理的配慮の具体例 7 4.過重な負担の基本的な考え方 8 X 環境の整備 9 Y 相談体制の整備 10 1.庁内における相談体制の整備 10 2.庁外における相談窓口の整備 10 Z 職員に対する研修・啓発 11 参考資料 12  障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 T はじめに 1. 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)の制定の経緯  国は、平成19年に「障害者の権利に関する条約」に署名して以来、「障害者基本法(昭和45年法律第84号)」の改正を始めとする国内法の整備等を進めてきました。「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)」は、「障害者基本法」の差別の禁止の基本原則を具体化するものであり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重しあいながら共生する社会の実現に向け、障害者差別の解消を推進することを目的として、平成25年に制定、平成28年4月1日に施行されました。 2.法の基本的な考え方 (1) 法の趣旨  法は、行政機関等や民間事業者に、障害を理由とする差別をなくすための措置を定め、それを実施することで、障害のある・なしに関わらず、皆が互いに人格と個性を尊重しあいながら共生できる社会をつくることを目的としています。 (2) 法で定められた義務について  法により行政機関等及び民間事業者は、事務・事業を行うに当たり障害のある人の権利利益を侵害することのないように次の義務が課せられています。   区分 不当な差別的取扱い 合理的配慮の提供 行政機関等 禁止 不当な差別的取扱いが禁止されます。 必須義務 障害のある人に対して合理的配慮を行わなければなりません。 民間事業者 努力義務 障害のある人に対して合理的配慮を行うよう努めなければなりません。   さらに、行政機関等には以下についても義務が課せられています。 > 相談体制の整備 > 研修・啓発活動の実施 > 環境の整備(努力義務)         (3) 法の対象となる障害者  法が対象とする障害者は、障害者基本法で定められている障害のある人(身体障害、知的障害、精神障害〈発達障害を含む〉、その他の心身の機能の障害がある人で、障害や社会的障壁(※)によって継続的に日常生活や社会生活に支障をきたしている人)であって、障害者手帳を持っていない人も含まれます。  これは、障害者が日常生活や社会生活において受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会的障壁と相対することによって生じるものという考え方を踏まえています。 ※ 社会的障壁とは    心身の障害によるものだけでなく、障害のある人にとって日常生活や社会生活を送るうえで障壁(バリアー)となる様々なもので、次のような事物、制度、慣行、観念などが挙げられます。特に女性やこどもの場合はその特性に応じた配慮も必要です。 ・社会における事物:通行、利用しにくい施設、設備など ・制度:利用しにくい制度など ・慣行:障害のある人の存在を意識していない慣習、文化など ・観念:障害のある人への偏見など 社会的障壁の具体例 物理的障壁:道路の段差、車いすの人には届かない自動販売機、利用しにくい交通機関等 制度的障壁:障害を理由に入学、就職、資格取得等の機会が与えられない等 文化・情報面での障壁:漢字ばかりの書類、読み上げソフトが機能しない画像のみのホームページ等 心理的障壁:点字ブロックの上の看板や自転車を置く(障害への無知・無関心)、障害のある人に対する心ない発言、視線等(偏見や差別意識)      3.本市の姿勢  市では、社会的障壁のない共生社会の実現を目指し、「第5次所沢市総合計画後期基本計画」では「障害のある人が社会参加しながら、住み慣れた地域でいきいきと暮らせるまち」を障害者福祉施策の基本理念として掲げています。  その基本理念の下、障害のある人に関する施策を総合的・計画的に推進するための「第3次所沢市障害者支援計画1」は、差別解消及び権利擁護を主な施策の一つとして位置付けています。  このような計画や法の趣旨に対する理解を深め、障害を理由とする差別の解消に向けた取り組みを、市が一体となって積極的に推進するために、この対応要領を策定することとしました。 U 対応要領の趣旨 1.対応要領の対象範囲  本対応要領は、市全体としての統一的な方針の下で必要な対応・取組ができるように、所沢市の全職員(臨時的任用職員等を含む。)を対象とします。また、法では「事業者」に該当する地方公営企業(上下水道部及び市民医療センター)についても、法の枠組を踏まえたうえで、可能な限り本対応要領の対象とします。       さらに、各部等から事務・事業を委託された事業所の職員等についても、同様に本対応要領の対象としています。  なお、障害者雇用における差別解消のための措置(募集・採用時の応募者や採用後の職員対応)については、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」の定めるところによるものとなっています。    ※「事業者」については、主務大臣が事業分野ごとに「対応指針」(ガイドライン)を定めています。     ■対象となる部等 ・所沢市行政組織条例第1条第1項に規定する部 (経営企画部、総務部、財務部、市民部、福祉部、こども未来部、健康推進部、環境クリーン部、産業経済部、街づくり計画部、建設部) ・出納室、秘書室 ・所沢市教育委員会事務局組織及び各課事務分掌規則第2条に規定する部 (教育総務部、学校教育部) ・議会事務局、選挙管理委員会事務局、監査事務局、農業委員会事務局 ・市民医療センター ・所沢市水道事業及び下水道事業の設置等に関する条例第4条第2項に規定する部 (上下水道部)  2.職員の業務上・服務上の指針  この対応要領は、職務を遂行するにあたり、障害のある人に対して障害を理由とする権利利益の侵害がないよう、各職員が業務上、服務上の指針とするものです。  職員が障害のある人に対し不当な差別的取扱いを行ったり、過重な負担がないにもかかわらず合理的配慮の提供を怠った場合、その態様等によっては、職務上の義務に違反した場合や職務を怠った場合に該当し、各任命権者による懲戒処分等の対象となる場合があります。     3.監督者の責務  職員のうち、所属長及び施設の長は、障害を理由とする差別の解消を推進するため、以下の事項を実施することとします。   > 障害を理由とする差別の解消に関し、所属職員の注意を喚起し、認識を深めさせること。 > 障害のある人等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申し出があった場合は、迅速に状況を確認し、適切に対処すること。 > 合理的配慮の必要性が確認された場合、所属職員に対して、合理的配慮を適切に行うよう指導すること。     V 障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止 1.不当な差別的取扱いの基本的な考え方  不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害を理由としてサービス等の提供を拒否したり、制限したり、また、障害のない人には付けないような条件を付けたりすることです。  ただし、障害のある人とない人の事実上の平等を促進、達成するために必要な特別な措置、例えば、状況に応じて障害のある人を優遇する以下のような対応等は、法的差別には当たりません。   > 障害のある人を障害のない人と比べて優遇する取扱い(積極的改善措置)。 > 合理的配慮を行うことによる障害のない人との異なる取扱い。 > 合理的配慮を行うために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害の状況等を確認すること。 2.正当な理由の判断の視点  正当な理由があって、障害のある人とない人で異なる対応をした場合は、法的差別にはなりません。ただし、正当な理由は、安全の確保、財産の保全、事務や事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等、個別の場面や状況に応じて総合的・客観的に判断する必要があります。職員は、正当な理由があると判断した場合はその理由を説明しなければなりません。 3.不当な差別的取扱いの具体例  具体例は、正当な理由がないことを前提としています。また、これらはあくまでも例示であり、記載されている例だけに限られるものではありません。   ■不当な差別的取扱いの具体例 ○障害を理由に窓口対応を拒否したり、対応の順序を後回しにする。 ○障害を理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。 ○障害を理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。 ○特に必要ではないにもかかわらず、障害を理由に、来庁の際に付き添い者の同行を求める等の条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付き添い者の同行を拒んだりする。 ○身体障害者補助犬法に基づく、盲導犬・聴導犬・介助犬の同伴を拒否する。 ○障害のあることを理由に威圧的な口調で話したり、横柄な対応をする。 W 合理的配慮の提供 1.合理的配慮の基本的な考え方  合理的配慮とは、障害のある人から配慮を求める意思の表明があった場合に、負担になり過ぎない範囲で、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、当事者の性別、年齢、障害の状態等に応じて、社会的障壁を取り除くことです。 2.合理的配慮を行うにあたっての留意点  (1)範囲 > 事務・事業の目的、内容、機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に関すること。 > 障害のない人と同等の機会の提供を受けるためのものであること。 > 事業の目的・内容・機能を本質的に変更するものではないこと。 (2)対応の個別性  > 合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであること。 > 障害のある人の置かれている状況を踏まえ、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話に より、柔軟に対応がなされるものであること。 > 合理的配慮の提供に当たっては、障害のある人の性別、年齢、障害の状態等に配慮する必要があること。   (3)意思の表明  > 意思の表明は、言語(手話を含む。)のほか、点字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達等、障害のある人が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられるものであること。 > 障害のある人からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害のある人の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含まれること。 ※ なお、意思の表明が困難な障害のある人が、コミュニケーションを支援する者を伴っていない場合であっても、社会的障壁の除去を必要としていることが明らかな場合には、適切な配慮をするために建設的対話を働きかける等、自主的な取組に努めることが重要です。 3.合理的配慮の具体例  合理的配慮については、障害の特性や個々の状況により対応が異なってくることから、どのような配慮が必要か本人に確認することが大切です。   また、具体例はあくまでも例示であり、記載されている例だけに限られるものではありません。    ■物理的環境への配慮の具体例 ○段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をする。携帯スロープを設置する。 ○高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置を分かりやすく伝える。 ○パンフレット等を置く場合は、車いす利用者に配慮してできるだけ低い位置に置く。 ○目的の場所までの案内の際に、障害のある人の歩行速度に合わせた速度で歩く。また、前後・左右・距離の位置取りについて、障害のある人の希望を聞く。 ○障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を出入口付近にする。 ○疲労を感じやすい障害のある人から別室での休憩の申し出があった際に、休憩場所を提供する。別室の確保が困難な場合は、長椅子を移動させるなどして臨時の休憩スペースを設ける。 ○不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害のある人に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供する。 ○災害や事故が発生した際、館内放送で避難等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害者に対し、電光掲示板、手書きボードを用いて、分かりやすく案内し誘導を図る。    ■ルール・慣行の柔軟な変更の具体例 ○順番を待つことが苦手な障害のある人に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続き順を入れ替える。 ○立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、障害のある人の順番が来るまで別室や席を用意する。 ○スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。 ○車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。 ○市役所等の敷地内の駐車場において、障害のある人の来庁が多数見込まれる場合、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更する。 ○他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合、障害の特性や施設の状況に応じて別室を用意する。 ○非公表等の会議において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認める。  ■意思疎通配慮の具体例 ○筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字等のコミュニケーション手段を用いる。 ○会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々のページ番号等が異なる場合があることに留意して使用する。 ○視覚障害のある委員に会議資料等を事前送付する際、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。 ○意思疎通が不得意な障害のある人に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。 ○駐車場などで通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。 ○連絡先などに電話番号のみでなく、FAX番号、eメールアドレスも記載する。 ○書類記入の際に、記入方法等を本人の目の前で示したり、分かりやすく記述で伝達したりする。 ○本人の依頼がある場合には、プライバシーに配慮しつつ代読や代筆を行う。 ○比喩表現等が苦手な人に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明する。 ○障害のある人から申し出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、メモを渡す際は、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記でなく午前・午後で表記するなどの配慮を行う。 ○会議の進行に当たっては、職員等が委員の障害の特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲での配慮を行う。 ○市の主催する会議においては、不特定多数の傍聴人を想定して、可能な限り手話通訳者、要約筆記者を用意する。 4.過重な負担の基本的な考え方  過重な負担については、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが重要です。また、過重な負担に当たると判断した場合は、障害のある人にその理由を説明し、理解を得るよう努めるものとします。  具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことがないように注意が必要です。 ・事業への影響の程度(事業の目的・内容・機能を損なうか否か) ・実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) ・費用・負担の程度 ・事業規模 ・財務状況 X 環境の整備  法では、合理的配慮を的確に行うために必要な環境の整備に努めなければならないとされています。  また、合理的配慮を必要とする障害のある人が多数または継続的に見込まれる場合は、そのための環境の整備を進めることで、合理的配慮に要するコストの軽減や質の向上が期待できます。  このような趣旨を踏まえながら、市では「ユニバーサルデザイン推進基本方針」に基づき、社会的障壁のない社会環境の整備に積極的に取り組む必要があります。  さらに、環境の整備には、社会環境の整備(ハード面)のみならず、職員の意識啓発や研修等(ソフト面)も含まれます。 Y 相談体制の整備 1.庁内における相談体制の整備  職員による障害を理由とする差別に関する相談(苦情等)については、当該職員の所属において対応するものとします。また、所管する事務・事業に関する相談に関しては、当該事務・事業を所管する課が対応することを基本とします。  ただし、調整が困難なケースや障害に関する助言等については、障害担当課(障害福祉課・こども福祉課・健康管理課)や、職員課その他の人事担当課が解決に向けた協力をするものとします。  また、各課に寄せられた相談等は、障害福祉課が定期的に情報を集約し、相談者のプライバシーに配慮しつつ庁内・関係機関に情報をフィードバックすることで、本市全体の差別解消に向けた取り組みの推進を図ります。  なお、相談を受ける過程においても、不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供が求められます。 2.庁外における相談窓口の整備  障害を理由とする差別の解消に関する相談のうち、本市の事務・事業とは関連のない事柄に関する相談等については、障害担当課(障害福祉課・こども福祉課・健康管理課)または、委託相談支援事業所2において対応します。  また、「所沢市自立支援協議会」に「障害者差別解消支援地域協議会」の機能を付加し、地域における障害者差別に関する相談事例、解決に至った事例、合理的配慮の具体例等についての情報を共有し、事案発生防止のための取り組みや、周知・啓発活動に係る協議を行います。    ■障害担当課 相談窓口   障害福祉課  連絡先  TEL 2998-9116 FAX 2998-1147 相談窓口 こども福祉課  連絡先  TEL 2998-9223 FAX 2998-9035 相談窓口 健康管理課こころの健康支援室   連絡先 TEL 2991-1812 FAX 2995-1178            ■委託相談支援事業所 相談窓口  ところざわ障がい者相談支援センター 連絡先  TEL 2929-1705 FAX 2923-4780 相談窓口  障害者生活支援センター所沢しあわせの里 連絡先 TEL 2921-5566 FAX 2921-6666 相談窓口   生活支援ルームさぽっと 連絡先 TEL 2992-7888 FAX 2935-3555 相談窓口 地域生活支援センターぽぷり 連絡先 TEL 2924-2255 FAX 2924-3366 相談窓口  地域生活支援センター所沢どんぐり 連絡先 TEL 2993-8585 FAX 2993-8585         Z 職員に対する研修・啓発  職員一人一人が障害のある人に対して適切に対応するためには、障害を理由とする差別の解消に関する基本的な事柄や、職員が求められる役割について理解することが重要です。  そのため、法の趣旨及び対応要領の周知徹底、障害特性を学ぶ等の各種研修を実施することにより、職員の障害に関する理解促進を図ります。 参考資料 ○障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 (平成二十五年法律第六十五号) 目次 第一章 総則(第一条―第五条) 第二章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(第六条) 第三章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置(第七条―第十三条) 第四章 障害を理由とする差別を解消するための支援措置(第十四条―第二十条) 第五章 雑則(第二十一条―第二十四条) 第六章 罰則(第二十五条・第二十六条) 附則 第一章 総則 (目的) 第一条 この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 二 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 三 行政機関等 国の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体(地方公営企業法(昭和二十七年法律第二百九十二号)第三章の規定の適用を受ける地方公共団体の経営する企業を除く。第七号、第十条及び附則第四条第一項において同じ。)及び地方独立行政法人をいう。 四 国の行政機関 次に掲げる機関をいう。 イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関 ロ 内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項及び第二項に規定する機関(これらの機関のうちニの政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。) ハ 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関(ホの政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。) ニ 内閣府設置法第三十九条及び第五十五条並びに宮内庁法(昭和二十二年法律第七十号)第十六条第二項の機関並びに内閣府設置法第四十条及び第五十六条(宮内庁法第十八条第一項において準用する場合を含む。)の特別の機関で、政令で定めるもの ホ 国家行政組織法第八条の二の施設等機関及び同法第八条の三の特別の機関で、政令で定めるもの ヘ 会計検査院 五 独立行政法人等 次に掲げる法人をいう。 イ 独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。ロにおいて同じ。) ロ 法律により直接に設立された法人、特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人(独立行政法人を除く。)又は特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政庁の認可を要する法人のうち、政令で定めるもの 六 地方独立行政法人 地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人(同法第二十一条第三号に掲げる業務を行うものを除く。)をいう。 七 事業者 商業その他の事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)をいう。 (国及び地方公共団体の責務) 第三条 国及び地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない。 (国民の責務) 第四条 国民は、第一条に規定する社会を実現する上で障害を理由とする差別の解消が重要であることに鑑み、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない。 (社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備) 第五条 行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。 第二章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 第六条 政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。 2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。 一 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向 二 行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 三 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 四 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項 3 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。 4 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。 5 内閣総理大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。 6 前三項の規定は、基本方針の変更について準用する。 第三章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置 (行政機関等における障害を理由とする差別の禁止) 第七条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 (事業者における障害を理由とする差別の禁止) 第八条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。 (国等職員対応要領) 第九条 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当該国の行政機関及び独立行政法人等の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第三条において「国等職員対応要領」という。)を定めるものとする。 2 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。 3 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。 4 前二項の規定は、国等職員対応要領の変更について準用する。 (地方公共団体等職員対応要領) 第十条 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当該地方公共団体の機関及び地方独立行政法人の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第四条において「地方公共団体等職員対応要領」という。)を定めるよう努めるものとする。 2 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。 3 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。 4 国は、地方公共団体の機関及び地方独立行政法人による地方公共団体等職員対応要領の作成に協力しなければならない。 5 前三項の規定は、地方公共団体等職員対応要領の変更について準用する。 (事業者のための対応指針) 第十一条 主務大臣は、基本方針に即して、第八条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めるものとする。 2 第九条第二項から第四項までの規定は、対応指針について準用する。 (報告の徴収並びに助言、指導及び勧告) 第十二条 主務大臣は、第八条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。 (事業主による措置に関する特例) 第十三条 行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)の定めるところによる。 第四章 障害を理由とする差別を解消するための支援措置 (相談及び紛争の防止等のための体制の整備) 第十四条 国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする。 (啓発活動) 第十五条 国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。 (情報の収集、整理及び提供) 第十六条 国は、障害を理由とする差別を解消するための取組に資するよう、国内外における障害を理由とする差別及びその解消のための取組に関する情報の収集、整理及び提供を行うものとする。 (障害者差別解消支援地域協議会) 第十七条 国及び地方公共団体の機関であって、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事するもの(以下この項及び次条第二項において「関係機関」という。)は、当該地方公共団体の区域において関係機関が行う障害を理由とする差別に関する相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため、関係機関により構成される障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる。 2 前項の規定により協議会を組織する国及び地方公共団体の機関は、必要があると認めるときは、協議会に次に掲げる者を構成員として加えることができる。 一 特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他の団体 二 学識経験者 三 その他当該国及び地方公共団体の機関が必要と認める者 (協議会の事務等) 第十八条 協議会は、前条第一項の目的を達するため、必要な情報を交換するとともに、障害者からの相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関する協議を行うものとする。 2 関係機関及び前条第二項の構成員(次項において「構成機関等」という。)は、前項の協議の結果に基づき、当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を行うものとする。 3 協議会は、第一項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるとき、又は構成機関等が行う相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関し他の構成機関等から要請があった場合において必要があると認めるときは、構成機関等に対し、相談を行った障害者及び差別に係る事案に関する情報の提供、意見の表明その他の必要な協力を求めることができる。 4 協議会の庶務は、協議会を構成する地方公共団体において処理する。 5 協議会が組織されたときは、当該地方公共団体は、内閣府令で定めるところにより、その旨を公表しなければならない。 (秘密保持義務) 第十九条 協議会の事務に従事する者又は協議会の事務に従事していた者は、正当な理由なく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。 (協議会の定める事項) 第二十条 前三条に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会が定める。 第五章 雑則 (主務大臣) 第二十一条 この法律における主務大臣は、対応指針の対象となる事業者の事業を所管する大臣又は国家公安委員会とする。 (地方公共団体が処理する事務) 第二十二条 第十二条に規定する主務大臣の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、地方公共団体の長その他の執行機関が行うこととすることができる。 (権限の委任) 第二十三条 この法律の規定により主務大臣の権限に属する事項は、政令で定めるところにより、その所属の職員に委任することができる。 (政令への委任) 第二十四条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。 第六章 罰則 第二十五条 第十九条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 第二十六条 第十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。 附 則 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、平成二十八年四月一日から施行する。ただし、次条から附則第六条までの規定は、公布の日から施行する。 (基本方針に関する経過措置) 第二条 政府は、この法律の施行前においても、第六条の規定の例により、基本方針を定めることができる。この場合において、内閣総理大臣は、この法律の施行前においても、同条の規定の例により、これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた基本方針は、この法律の施行の日において第六条の規定により定められたものとみなす。 (国等職員対応要領に関する経過措置) 第三条 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、この法律の施行前においても、第九条の規定の例により、国等職員対応要領を定め、これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた国等職員対応要領は、この法律の施行の日において第九条の規定により定められたものとみなす。 (地方公共団体等職員対応要領に関する経過措置) 第四条 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、この法律の施行前においても、第十条の規定の例により、地方公共団体等職員対応要領を定め、これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた地方公共団体等職員対応要領は、この法律の施行の日において第十条の規定により定められたものとみなす。 (対応指針に関する経過措置) 第五条 主務大臣は、この法律の施行前においても、第十一条の規定の例により、対応指針を定め、これを公表することができる。 2 前項の規定により定められた対応指針は、この法律の施行の日において第十一条の規定により定められたものとみなす。 (政令への委任) 第六条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。 (検討) 第七条 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、第八条第二項に規定する社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮の在り方その他この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする。