年を越したトンボ【ふれあいの里だより(令和2年1月号)】

更新日:2022年1月28日

令和最初の新年、十二支も最初の子年。植物の循環を表しているといわれる十二支、子年は新しい命が種子の中にきざし始める状態を意味します。晩秋に芽生えたムラサキケマンはすでに優しい緑の葉を広げて年を越しました。ウグイスカグラはちらりほらりと咲き始めて年を越しました。そしてその名もずばり越年蜻蛉(オツネントンボ)は成虫で年を越しました。ヤゴで冬越しをし、春から夏にかけて成虫期間を過ごすのが大半のトンボの仲間たち。日本ではほかにホソミオツネントンボ、ホソミイトトンボの2種が成虫越冬をします。 
 オツネントンボはアオイトトンボ科で、腹長27ミリメートル内外、後翅21ミリメートル内外。雌雄で色彩斑紋はほとんど差がありません。北海道、本州、四国、九州に分布し朝鮮半島、中国北部、中央アジア、南ロシア、中央ヨーロッパに至ります。未熟のまま山林の木の皮の隙間や草原の茂みの中、建物の隙間などで冬を越し春になると成熟し、田園や池沼のアヤメやショウブなど抽水植物の葉に年に1度の産卵をします。早い時季ですと枯れた状態の葉に産卵もします。成熟すると複眼が青くなるものの体色に変化はありません。卵の期間は1、2週間で、幼虫が育つのも早く1.5か月から3か月で羽化します。そして長い成虫期間になりますが、夏の間の生態はあまりよくわかっていません。生れ育った池沼付近で見られることはほとんどなく、かなりの距離を移動していると思われます。夏から秋にセンター周辺で見かけることがありますが、茶色い体は止まっていると枝のようです。よく似たホソミオツネントンボとは前翅と後翅の斑紋がずれることで区別できます。
 枯葉に止まっていてもなかなか見つけにくいうえに数も多くなく、絶滅危惧種になっている地域もあります。四国、九州には少なく寒冷地を好み、越冬中に雪に埋もれても平気なオツネントンボ。水質汚濁や土地開発の影響も受けやすいので今後さらに数を減らす恐れがあります。狭山丘陵のどこかできっと年を越し、春を待っているオツネントンボ。また出会える日を楽しみに待ちましょう。
 野鳥たちが主役のような冬の森。にぎやかに鳴きながら樹間を移動しているメジロ。共に混群を形成しているのはシジュウカラ、ヤマガラ、コゲラなど。ジョウビタキやルリビタキ、シロハラ、ツグミといった単独でいるものもいます。冬至を過ぎ日没時間は少しずつ遅くなっていますが、日の出はまだ遅く寒さはこれから本番になっていきます。春の兆しと冬の楽しみ、どちらも探しながら歩きたい1月の森です。

お問い合わせ

埼玉県狭山丘陵いきものふれあいの里センター

郵便番号359-1133 所沢市荒幡782番地
西武狭山線 下山口駅 徒歩約15分
電話:04‐2939‐9412

休館日

月曜、祝日の翌日(その日が休日の場合を除く)、12月29日から1月3日

本文ここまで